どうも、医学生シン(@BodymakeShin)です!
この記事では、最近読んだ心温まるファンタジー小説をご紹介します!
今回ご紹介するのは、望月麻衣著『満月珈琲店の星詠み』です!
この本は、私生活や仕事で行き詰った人が『猫のマスターがいる喫茶店』に迷い込み、猫のマスターに諭されることで葛藤を乗り越える物語です。
こんな人におすすめ!
私はこの本を、占いが好きな方、人間ドラマが好きな方におススメします。
この本について簡単に説明すると、この本はファンタジーの要素とヒューマンドラマの要素を併せ持っています。
この本は短編が4つ集まって1冊の小説になっており、各章で人生に行き詰った人が満月の夜にのみ出現する喫茶店『満月珈琲店』を訪れることで物語が始まります。
満月珈琲店は『猫のマスター』が訪問客の精神状態にピッタリのスイーツやドリンクを出してくれます。
そして、ここでポイントなのが、猫のマスターが訪問客の出生図(ネイタルチャート)を読み解いて、的確なアドバイスをしてくれるということです。
満月珈琲店を訪れる訪問客は、現代ではありふれていて、しかし深刻な悩みを抱えています。
そんな彼らの悩みを、猫のマスターは占星術とおいしいスイーツで溶かしていきます。
ここで面白いのが、この本に出てくる占星術が、日本では一般的な『星座占い』ではなく、惑星を用いたものであることです
一般的な星座占いに慣れ親しんでいると、この本に出てくる『星詠み』に最初は戸惑うかもしれません。
しかし、読み進めていくと緻密に練り上げられた星詠みの世界観に引き込まれること間違いなしです!
また、登場人物たちが過去のトラウマや、自分自身ではどうしようもない自分の性格で苦しんでいるのを、猫のマスターの言葉で解きほぐされていくのにも感動します。
- 占いが好きな人にオススメ!
- 人間ドラマが好きな人にオススメ!
この本の一推しポイント!
次に、私が思うこの本の一押しポイントを解説します。
それは、登場人物の悩みが現代人にもありがちなものであるがゆえに、まるで自分が満月珈琲店にいて、猫のマスターからアドバイスを受けているような気になることです。
その没入感がたまりません。
前述の通り、満月の夜にだけ現れる喫茶店には様々な悩みを抱えた人が訪れます。
そして、たいていの悩みとは、外的要因と内的要因のどちらも関わっているものです。
最近流行の『アドラー心理学』の”トラウマの否定”と考え方は同じです。要は、同じ逆境でも、腐る人と腐らない人がいるよね、という話です
本編の登場人物は様々な困難に見舞われて、悩みを抱えているわけですが、その悩みには多かれ少なかれ自分が原因の部分があるということです。
そして、登場人物に近い性格の読者は、もしかしたら同じような悩みを抱えていて、それに対して猫のマスターが出したアドバイスが心に刺さるかもしれません。
登場人物の悩みのリアリティは、まるで自分が月下の喫茶店にいて話を聞いているかのような没入感を生みます。
特に私は第一章の主人公・芹川瑞希(せりかわ みずき)の悩みに深く共鳴し、マスターの助言が深く心に刺さりました。
シンデレラを助け出してくれる王子さまはいない
第一章の内容をかなりざっくりと説明します。
まず、シナリオライターをやっている芹川瑞希は、スランプに悩んでいました。
一時は知らぬ者はいないというほどの売れっ子のシナリオライターでしたが、今は思うようにシナリオが描けず、鬱屈とした思いを抱えています。
そんなある日、昔の伝手で制作会社のディレクターに企画を持ち込みますが、あと一歩のところで企画が通らず、自分の限界を感じて消沈してしまいます。
カフェで茫然としていると、初対面の青年に『満月珈琲店』のことを教えてもらい、好奇心から『満月珈琲店』を訪れます。
そこで、猫のマスターに自分のレコード、つまり自分自身のすべてを諭され、これからどう生きるか考える・・・。
ネタバレを回避するため、かなり細部を削ぎ落しましたが、その細部にこそ面白さが詰まっていますので、ぜひこの本を手に取って読んでください!
さて、第一章の主人公・芹川瑞希はシナリオライターです。
本編ではなぜ彼女がスランプに陥ってしまったのか、なぜ急に彼女のシナリオを世間が受け付けなくなったのかについて、星詠みを絡めて掘り下げています。
それを受けて、芹川瑞希はスランプ脱出の糸口をつかみます。この部分も、誰にとっても参考になる部分です。
しかし、私がより深く共感したのは、芹川瑞希が悲劇のヒロインを気取っていると指摘された部分です。
芹川瑞希はもともと家具や調度品にこだわっていましたが、スランプに陥ってしまってからはそれらを売り払って、住み心地の良くない家に引っ越しています。
芹川瑞希はそれを貧苦のせいだとうそぶいていましたが、本当は自棄になって被害者を演じていただけでした。
センセは自棄になっていただけでしょう? (中略) すっかり、悲劇のヒロインになっていたのだ
満月珈琲店の星詠み 望月麻衣 文藝春秋 2020/7/8 75ページより引用
引用の前半は芹川瑞希の被害者意識を指摘した猫のセリフで、後半は芹川瑞希のセリフです。
指摘を受け入れた芹川瑞希は、その後できる範囲で部屋を快適にするよう努めたこともあってか、シナリオライターとしての名声を回復していきます。
『苦悩から逃れるために被害者意識で心を守る』というのは私にとって耳の痛い話です。
思い出すのは、大学受験の時のことです。
その時の私は、なかなか成績が上がらず、ヤケになっていました。
予備校に長く残ってお腹ペコペコで帰ったり、睡眠時間を削ったり、進んで苦しんでいました。
まるで苦しむほど成績が上がると信じているようでした。
もちろん苦しみに比例して成績が上がるなんてことはなく、あの時間は私の人生の中でもトップで無駄な時間でした
パフォーマンスを維持する、心を健康に保つために必要なことは、決して贅沢や怠惰ではない。
前々からうっすらと考えていたことが、この本を読んですっきりと言語化されました。
臥薪嘗胆(がしんしょうたん)という言葉がありますが、苦しむこと自体には意味などない。
貴重な学びです。
『満月珈琲店の星詠み』を読むならKindle Unlimited!
最後に、『満月珈琲店の星詠み』を読むならKindle Unlimitedを利用するのがおススメです。
月額980円で対象の電子書籍が読み放題です。
私もKindle Unlimitedを活用しており、『満月珈琲店の星詠み』も対象書籍に含まれています。
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