【書評】愛することについて迫った名作!

小説

 どうも、医学生シン(@BodymakeShin)です!

 この記事では、最近読んだ恋愛小説『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』が素敵だったのでご紹介します!

 この本は、著者の汐見夏衛氏のデビュー作『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の続編です。

シン
シン

しかし私は愚かにもそのことに気付かず、最初からこの本を読んでしまいました

 続編から読み始めるというのは何とも型破りですが、それでも十二分に楽しめました。

こんな人におススメ!

 恋愛小説『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』は、綺麗で純粋な愛を綴る感動作です。

  • いえーい、彼氏君見てる~?とか
  • 可愛いだけの女だと飽きちゃうんだよね、とか
  • 彼は優しいけど、それだけだとドキドキしないの、とか

 こういった恋愛の生々しい要素はありません。

シン
シン

『余計な要素はいらない!純粋な恋物語を楽しみたいんだ!』という人にうってつけの作品と言えるでしょう

 本作は、主人公の涼が中学2年生の時に転校し、登校初日にクラスメイトの百合と出会うところから始まります。

 どこか大人びている百合に涼は懐かしさを感じるとともに、次第に惹かれていきます。 

 そんな折、課外授業で第二次世界大戦の特攻隊について調べることになり、涼と百合は同じグループになります。

 一緒に課題をこなすことで急速に2人の中は深まっていき、ついに涼は百合に告白します

 しかし、百合は『自分には忘れられない人がいる』と語り始めます。

 『想い人が、自分の中に別人を見出すことを許容できるか?』というのがこの作品のテーマです。

この本の一推しポイント!

 さて、次にこの本の『一推しポイント』について解説します。

 この本の『一推しポイント』は、涼と百合が夢に真摯なことです。

 前述の通り、この本は綺麗で純粋な恋愛小説です。

 つまり、記号的な好青年が、記号的な美少女と出会って恋に落ち、月並みに発展して恋仲になるという物語でも良いわけです。あらゆるジャンルに『典型』というものはあり、『記号の消費』にも一定の需要はあります。

 しかし、この作品はそういった『量産品』とは差別化されています。主な差別化ポイントは『夢への情熱』です。

夢を見られるのも、それを叶えるために必死になれるのも、すごく奇跡的なことなんだよ

あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。 汐見夏衛 スターツ出版 2021/1/4 117ページ

 このセリフは、涼がサッカーを真剣に続けることを親に反対され、不貞腐れて投げやりになっているのを、百合が𠮟責しているシーンのものです。

 百合にとって夢とは誰でも持てるものではなく、夢を見れる環境や、心の底から湧いてくる情熱を必要とするものなのでしょう。

 だからこそ、サッカーを真剣にやっている涼に好感を示していたし、夢を軽く扱えば上記のように咎めもするというわけです。

シン
シン

夢を大切なものに位置付け、自分の大切なもののためなら言葉を尽くす姿勢は好感が持てます

 百合がただ可愛いだけの女の子ではないというのは、この作品の魅力を引き立てています。

ラストについて(ネタバレあり)

 ここからは、本作のラストについてしっかりとネタバレを含みます。一読してから読むことをおススメします!

 無粋で蛇足ではありますが、ラストについては納得がいかないので自分の考えをまとめます。

シン
シン

この作品は名作であり、だからこそ、読者としては『こうあってほしい!』というエゴを持ってしまいます

 この小説のラストで、百合は涼の中にあきらを見出し続け、それが原因で涼に見限られてしまうのではないかと悩みます。

 それに対して、涼は『かつてあきらを愛した百合を愛している』『自分とあきらの両方を愛してほしい』と返します。

 まさにパーフェクトアンサー。悩める乙女の心を射抜く、完璧な回答です。

 しかしながら、男の私からすれば、涼の返答は『はぁ!?!?』です。

 好きな女性の心に別の男がいまだにいることを許容するのは、男ではないと考えてしまいます。

 前述の通り、百合の魅力の1つに『夢に嘘をつかず、ひたむきである』ことがあります。涼は百合のそんな姿勢に感化され、サッカーを本気で続ける決心を固めました。

 であるのなら、百合への恋心にも真摯であるべきではないでしょうか。

シン
シン

つまり、私が何を言いたいかと言えば、『2人愛してとか甘いこと言ってんじゃねえ、もっと独占欲持てよ、涼』です

 個人的に120点のラストは、涼があきらを自分自身だと受け入れる、です。百合も、あきらと涼を同一視していますし。

 『魂に刻まれたあきらの思いが今の自分(涼)につながっている』とか『あきらの人生の延長に自分の人生がある』とか、そんな感じであきらと涼が混ざるのが私にとってのベスト・オブ・ベストです。

 ちょうど、涼が大学生になってから特攻資料館に行くシーンがあるので、そこで『あきらの魂と対話する』みたいなシーンを入れればよかったのではないかと思います。

 以上、一読者の蛇足でした!

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