【書評】自立した強い女性たちの恋物語

小説

 どうも、医学生シン(@BodymakeShin)です!

 この記事では、最近読んだ小説『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』が素敵だったのでご紹介します!

 小説『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』は、恋の悩みを抱えた女性が渋谷のセレクトショップ『Closet』を訪れて、今の自分にぴったりの逸品を選んでもらいます。そしてその過程で、自分の悩みと向き合う物語です。

 登場する悩める女の子は、今カレとのマンネリに悩むネイリスト、抜け出せない不倫に悩む美容ガチ勢、元カレと後輩が結婚するという複雑な立場のOL、写真家の彼氏と自分が釣り合っているのか悩む受付嬢などなど、バリエーション豊かなメンバーです。

 『店で悩みを聞いてもらって前向きな気持ちになる』『短編集』という点では、以前ご紹介した『満月珈琲店の星詠み』と似ています。

 違う点は、店主のスタンスでしょうか。『満月珈琲店の星詠み』のマスターはかなりがっつり客の内面に踏み込んできますが、『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』の店主は控えめです。

こんな人におススメ!

 この本は渋谷のおしゃれなセレクトショップが舞台なので、当然ファッション用語が多く出てきます。しかし、ファッションに疎くても内容はすっと頭に入ってきます。

 おしゃれに興味がある人はもちろん楽しめますし、明日のファッションの参考にもなります。

 しかし、この本はおしゃれへの興味が薄い人にこそ勧めたいです。

 というのも、この本は『服装は1つの自己表現であり、まだ気づいてない自分の内面を発見するきっかけでもある』と訴えてくるからです。

 私がそのことを強く意識させられたのが、セレクトショップ『Closet』の店員のセリフです。

カラダは少しずつ、変化していくのが普通です。太ったとか、痩せたとか、垂れたとかだけじゃなく、年とともに内面が変化することで、見た目の印象も変わってきたりするようです。人から見ると同じでも、自分だけがそう気づいたり……

試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。 尾形真理子 幻冬舎 2014/5/30 65ページより引用

 このセリフは、前は自分に似合っていたパンツが似合わなくなったと言う客に、店員がかけるセリフです。

 私を含めて多くの人は、服が自分に似合うかは外見にのみ左右されると考えるでしょう。つまり、着たい服があれば『痩せよう』『髪形を変えよう』といった方向で努力します。

 しかし、このセリフは、服が似合うかは外見のみに依存するわけではないと訴えてきます。

 たしかに思い返せば、体格や髪形は変わっていないのに、鏡の前で見るとなぜか服が似合っていないことはあります。

 服やファッションについて、

  • 風呂場に持ち込めない
  • ただの装飾
  • 教養や身体つきを磨いたほうが有意義

 こんな風に考えてしまう人は、この本を読んでみるのをおススメします。

 ファッションについて、新しい考え方に触れられます。

この本の一推しポイント!

 次に、この本の一推しポイントを解説します。

 この本の一推しポイントは、登場する女性たちが自立していることです。

 この小説は、恋に悩む女性がセレクトショップで逸品を見つけて、その過程で悩みを消化する物語です。

 それぞれの章で語り手の内面の変化は違いますが、共通しているのは『悩みを解決するのは自分自身の内面の変化だけ』だということです。

  • 自分を悩ませる人とは別の人物との素敵な出会いがある
  • 不意の幸運をつかむ

 こういった『棚からぼた餅』的な要素で悩みが解決することがなく、登場人物たちが悩んで迷って、セレクトショップ『Closet』から少しの手助けをもらい、自分で答えを見つけています。

 つまり、この本に登場する女性たちは自立しています

 周りに”引き上げられて”幸せになるシンデレラも悪くはないですが、私は自立した女性の方が好ましいです。

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